衆議院選挙を終え,「103万円の壁引き上げ」を掲げた国民民主党が大きく議席を伸ばした.大きく議席を減らし,過半数を割ってしまった自民党は国民民主党との協力関係を模索しているところであるが,国民民主党代表の玉木雄一郎は「103万円の壁引き上げ」を最低条件として自民党との政策のすり合わせを行っている.
そもそも今回,国民民主党が議席を伸ばした要因として,「若者世代からの絶大な支持」にあったと感じている.その中には親の扶養親族内の大学生・大学院生も多く含んでいることであろう.今回,玉木氏は選挙戦の中で「103万円の壁引き上げ」を幾度となく主張を行ってきた.アルバイトとして働く大学生に,この言葉はとても響いたのではないだろうか.しかし,選挙戦を終え,いざ103万円の壁撤廃の議論が始まったと思えば,メディア(主語がでかいかもしれないが,ほんの一部除きほぼ全て)は「高所得者優遇」だの「税収減」だのと,政策に対して懐疑的な論調となっている.
そもそも,103万円の壁とはどのようなものなのだろうか.簡単に説明する.なお,103万円の壁は大きく分けて2種類存在しており,ここではアルバイト先から給料をもらっている学生を前提にする.
まず,給与所得に対する所得税である.そもそも103万円の数字の根拠として,給与所得控除の55万円と基礎控除の48万円がある.この2つの控除額を合わせたものが103万ということなのである.この額を超えると所得税が超えた分にのみ課税されていくシステムである.例えば,うっかり105万円まで稼いだ場合だと,2万円が課税対象額なので,所得税5%で考えると,1000円の課税で済むことになる.あれ?思ったより少ないのでは・・・?と思ったかもしれませんが,2つめが割と残酷です.
2つ目は,いわゆる親の手取り減に関わってくるとされる扶養控除の壁である.働いている親は年末調整時に「扶養控除申告書」というものを会社に提出している.そこで,(普通の人ならば)何気なく自分の扶養している子供や妻(パートか専業主婦)の名前と生年月日を記入していることであろう.これを記入することによって,被扶養者(子供と専業主婦)の控除が認定され,翌年明けの給料日と合わせて,控除額分の還付金が支払われる仕組みとなっている.つまり,毎月源泉徴収されていた所得税を,扶養親族の申告によって取り返しているという流れである.そこで,働いている親の子供が所得税上の「被扶養者」として認定されるには「年収が103万円以下」である必要があるのである.つまり,子供が103万円以上稼いでしまうと,扶養控除は全く適用されなくなり,一般的な大学生であればなんと63万円分もの所得控除を親は失ってしまうことになる.もし親が年収1,000万円を超えるエリートサラリーマンだった場合,約20%の所得税が課税されるので,63×0.2でだいたい13万円もの「損失」となってしまう.これが103万円の壁を超えることの恐ろしさである.恐ろしさはこれだけではない.この扶養控除は住民税に対しても同様に課税されるので,こちらは45万円の控除額を失うため,住民税を10%とすると,さらに4.5万円「損」するのである.つまり,うっかり103万円を超えてしまったがために親が17.5万円も支払わなくてはならなくなってしまうのだ.(親の年収にもよるが)
おわかりいただけただろうか.何が言いたいかというと,学生目線で話すと,別に本人が103万円を得る分には何も問題はないが,親が思いもよらぬ追徴課税となってしまうということなのである.勘のいい人は,タイトルの問題点がどこにあるのかということを理解できた人もいるかもしれないが,今日はもう眠たいのでまた今度続きを書くこととする.
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